【最新のニュースから紐解く外国人雇用と不法就労】フォーを作るはずがハンバーガー店に・・・これって違法?
- takeshi kawamoto
- 8月12日
- 読了時間: 5分
最近、こんな衝撃的なニュースが報道されました。ベトナム料理の調理師として「技能」の在留資格を得て来日したベトナム人の方が、実際にはハンバーガー店で働くよう命じられ、結果として在留資格を失う事態に発展したというのです。
「同じ調理の仕事なのだから問題ないのでは?」そう思う方もいるかもしれません。しかし、この「技能」という在留資格には、私たちが思う以上に厳格で、専門的なルールが存在します。このルールを知らないと、企業側も外国人従業員側も、取り返しのつかない事態に陥りかねません。
この記事では、今回の事件の概要を振り返るとともに、外国人調理師を「技能」ビザで雇用する際に、絶対に知っておくべき注意点と要件を徹底的に解説します。
事件の概要(ニュースの概要を時系列で)
報道によると、事件の経緯は以下の通りです。
来日と配属の齟齬 あるベトナム人の方が、ベトナム料理であるフォーの専門店で調理師として働くことを目的に、在留資格「技能」を取得して来日しました。
想定外の職場 しかし、来日後、会社から配属されたのは、申請内容とは全く異なるハンバーガー店でした。本人はそこで働くことを余儀なくされました。
資格外活動の発覚 在留資格「技能」で許可されている活動は、申請時に提出した「専門的な技能を要する業務」に限られます。ベトナム料理の調理師として許可を得たにもかかわらず、ハンバーガー店で働くことは、この範囲を逸脱した「資格外活動」と見なされました。
在留資格の喪失と提訴 この資格外活動が原因で、この方は在留資格の更新が認められず、日本に滞在し続けることが困難な状況に陥りました。これに対し、本人は「会社の指示で意図せず不法就労状態にさせられた」として、会社側を相手取り訴訟を起こすに至りました。
この事件は、雇用主側の在留資格に対する理解不足が、外国人従業員の人生を大きく左右し、企業自身も法的なリスクを負うことになるという、深刻な教訓を私たちに示しています。
「技能」ビザで調理師を呼ぶ際の注意点と要件
では、なぜ「フォー」はOKで「ハンバーガー」はNGだったのでしょうか。それは、在留資格「技能」が持つ、非常に専門的な要件に理由があります。外国人調理師をこのビザで雇用する際には、以下の点を必ず押さえておく必要があります 。
1. 「外国の専門料理」であること【最重要】
「技能」ビザで認められる調理は、**「外国において考案され、日本では特殊な料理」**に限定されます 。具体的には、中華料理、フランス料理、インド料理、タイ料理などが典型例です 。
専門店の要件:働く店は、その外国料理の「専門店」である必要があります 。メニュー構成も重要で、単品だけでなくコース料理があるなど、専門性を示すことが求められます 。
認められない例:一般的な居酒屋、ファミリーレストラン、そして今回のケースのようなハンバーガー店や、ラーメン店、餃子専門店などは、たとえルーツが海外にあっても日本では一般化していると見なされ、「専門性」が認められにくく、許可が下りない可能性が非常に高いです 。
2. 10年以上の実務経験が必要
調理師本人には、原則として10年以上の実務経験が求められます 。
経験の証明:この経験は、過去に在籍していた店が発行する「在職証明書」などで客観的に証明する必要があります 。
学歴の算入:外国の教育機関で調理に関する科目を専攻した期間は、この実務経験に含めることができます 。
例外(タイ料理):タイ料理の調理師については、一定の要件を満たせば実務経験が5年以上で認められる場合があります 。
3. 業務内容は「調理」に限定される
「技能」ビザで許可される活動は、あくまで熟練した技能を要する調理業務そのものです 。
NGな業務:皿洗いや清掃、レジ打ち、接客といった業務は含まれません 。これらの業務をさせることは「資格外活動」にあたります。
店舗の体制:そのため、ビザの審査では、調理師以外に接客や雑務を行うスタッフが確保されているかどうかもチェックされます 。
4. 雇用主(店舗)の安定性
外国人調理師を雇用するだけの経営基盤があるかどうかも審査の対象です 。
経営状況:決算書などを通じて、安定した経営状況であることが求められます 。
店舗の規模:客席数が極端に少ないなど、小規模すぎる店舗では、専門の調理師を一人雇う必要性が低いと判断される可能性があります 。
5. 日本人と同等以上の給与
給与額は、同じ業務に従事する日本人がいる場合に、その日本人が受け取る額と同等かそれ以上でなければなりません 。これは、外国人を安価な労働力として雇用することを防ぐための重要な基準です。
まとめ
今回の事件は、外国人雇用における在留資格の厳格さを改めて浮き彫りにしました。「技能」ビザは、決して「便利な調理スタッフを雇うためのビザ」ではありません。あくまで**「日本において特殊な、外国の食文化を伝える専門家」**を招くための制度です。
雇用主は、申請時の内容と実際の業務内容が一致しているか、常に注意を払う責任があります。安易な判断や確認不足が、意図せずして不法就労を助長し、従業員の未来を奪い、自社を重大な法的リスクに晒すことになるのです。外国人調理師の雇用を検討する際は、これらの要件を十分に理解し、不明な点があれば専門家に相談することを強くお勧めします。
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