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【第3部】採用担当者必見!特定技能インドネシア人材・採用手続き完全マニュアル|複雑な政府手続き(E-PMI)もこれで完璧


【実践編】特定技能インドネシア人材の採用手続き完全ガイド


インドネシア人材、特にバリの人々が持つポテンシャルを理解した上で、次なるステップはそれを具体的な採用活動へと結びつけることです。ここでは、在留資格「特定技能」を利用してインドネシア人材を雇用するための手続きを、わかりやすく、すぐに実践できるように解説していきます。特にインドネシアからの採用は、二国間の協力覚書(MOC)に基づいた独自のルールが存在するため、正確に理解しておくことが欠かせません。


手続きの全体像:二国間協力覚書と政府管理システム


特定技能におけるインドネシア人との雇用手続きは、両国政府が定めた公的な枠組みの中で進められます。これは、悪質なブローカーを排除し、労働者の権利を保護しつつ、円滑な人材移動を促進するためのものです 。このプロセスを理解する上で、鍵となる2つの政府管理システムがあります。

  • IPKOL (Informasi Pasar Kerja Online) - 労働市場情報システム: インドネシア政府が運営するオンラインの求人・求職システムです 。日本の受け入れ企業は、ここに求人情報を登録することがインドネシア政府によって強く推奨されています。法的な義務ではありませんが、IPKOLを利用することで、インドネシアの求職者に直接アプローチでき、手続きの透明性を確保することができます 。

  • SISKOP2MI (Sistem Komputerisasi Pelindungan Pekerja Migran Indonesia) - インドネシア移住労働者保護コンピュータシステム: 海外で就労する全てのインドネシア人労働者を一元管理するための総合システムです。かつてのSISKOTKLNに代わるもので、特定技能の候補者は、採用プロセスの途中で必ずこのシステムに登録しなければなりません 。この登録を通じて、後述する移住労働者証が発行されます。


必須手続き:移住労働者証(E-KTKLN/E-PMI)の取得プロセス


インドネシア独自のルールとして最も重要なのが、この移住労働者証の存在です。

  • 移住労働者証とは: E-KTKLN(Kartu Tenaga Kerja Luar Negeri)またはE-PMI(Electronic-Perlindungan Migran Indonesia)と呼ばれるこの電子カードは、その労働者がインドネシア政府から公式に海外就労の許可を得た正規の労働者であることを証明するものです 。

  • 取得が必須となるケース: このカードの取得は、インドネシアから新たに人材を呼び寄せる場合はもちろん、既に技能実習生や留学生として日本に滞在している人材が、特定技能ビザに切り替える場合にも同様に必須となります 。

  • 取得の流れ: 通常、日本の受け入れ企業との雇用契約が締結され、日本の入管から在留資格認定証明書(COE)が交付された後(または国内での切り替えの場合は在留資格変更の申請準備が整った後)、候補者本人がSISKOP2MIシステム上で手続きを行います。この過程で、インドネシアの社会保障制度(BPJS)への加入と保険料の支払いも必要となります 。全ての手続きが完了すると、システムを通じて電子的にカードが発行されます。


採用ルート別・ステップ解説


採用には大きく分けて二つのルートがあり、それぞれ手続きの流れが少し異なります。


A. インドネシアからの新規呼び寄せ(海外在住者を採用する場合)

このルートは、日本にいない人材を新たに採用し、日本に呼び寄せるケースです。

  1. 求人登録: 受け入れ企業がIPKOLに求人情報を登録します(推奨) 。

  2. 選考・雇用契約締結: オンライン等で候補者と面接を行い、採用が決定したら、日本語とインドネシア語を併記した「特定技能雇用契約書」を締結します 。

  3. 在留資格認定証明書(COE)の申請: 受け入れ企業が、日本の管轄地方出入国在留管理局に対し、「在留資格認定証明書(COE)」の交付を申請します。これが日本側での最も重要なステップです 。

  4. COEの送付とSISKOP2MI登録: COEが交付されたら、その原本をインドネシアの候補者本人に国際郵便で送付します(電子COEの場合はメールPDF)。候補者は受け取ったCOEを用いて、SISKOP2MIに自身の情報を登録します 。

  5. 査証(ビザ)申請: 候補者は、パスポート、COE、そしてSISKOP2MI登録時に発行されたID番号などを準備し、インドネシアにある日本国大使館または総領事館で特定技能ビザを申請します 。

  6. E-PMIの発行と出国前オリエンテーション: ビザが発給された後、候補者はその情報をSISKOP2MIに登録し、最終的な手続きを経てE-PMI(移住労働者証)を取得します。その後、政府が義務付ける出国前オリエンテーションに参加します 。

  7. 来日・就労開始: 全ての手続きを終えた後、候補者は来日し、空港での上陸審査を経て、晴れて特定技能外国人として就労を開始します。


B. 日本国内在留者の資格変更(国内在住者を採用する場合)

このルートは、技能実習を修了した人材や、特定技能の試験に合格した留学生など、既に日本に住んでいる人材を採用するケースです。渡航手続きがない分、比較的スムーズに進めることができます。

  1. 選考・雇用契約締結: 国内で候補者を探し(人材紹介会社や自社での募集など)、面接を経て採用を決定。「特定技能雇用契約書」を締結します 。

  2. SISKOP2MI登録と推薦状の取得: 候補者本人が、新たな雇用契約情報をSISKOP2MIにオンラインで登録します。その後、東京にある駐日インドネシア大使館に出向き、海外労働者としての登録手続きを行い、「推薦状(Surat Rekomendasi)」を取得します。この推薦状が、国内での手続きで重要な書類となります 。

  3. 在留資格変更許可申請: 候補者本人(または行政書士などの代理人)が、日本の管轄地方出入国在留管理局に対し、現在の在留資格(技能実習など)から「特定技能」への「在留資格変更許可申請」を行います。この際、インドネシア大使館発行の推薦状を含む、多数の書類が必要となります 。

  4. 許可・就労開始: 審査を経て許可が下りると、新しい在留カードが交付され、特定技能外国人として正式に就労を開始できます。


表2:採用ルート別・手続きフローと担当機関一覧

ステップ

手続き内容(新規呼び寄せルート)

担当者/機関

1

IPKOLへの求人登録

日本の受け入れ企業

2

選考・雇用契約締結

日本の受け入れ企業、インドネシア人本人

3

在留資格認定証明書(COE)交付申請

日本の受け入れ企業 → 日本の出入国在留管理庁

4

COE送付、SISKOP2MIへの登録

日本の受け入れ企業、インドネシア人本人

5

査証(ビザ)申請

インドネシア人本人 → 在インドネシア日本国大使館

6

E-PMI発行、出国前オリエンテーション

インドネシア人本人、インドネシア政府機関

7

来日・就労開始

インドネシア人本人

ステップ

手続き内容(国内資格変更ルート)

担当者/機関

1

選考・雇用契約締結

日本の受け入れ企業、インドネシア人本人

2

SISKOP2MI登録、推薦状の取得

インドネシア人本人 → 駐日インドネシア大使館

3

在留資格変更許可申請

インドネシア人本人 → 日本の出入国在留管理庁

4

許可・就労開始

インドネシア人本人


最新動向:心理テスト導入に関する考察と情報収集


ユーザーの質問にあった「7月23日付で申請前に心理テストを行う必要性がある」という点について、この記事の執筆にあたり参照した公的資料や報道からは、この規則変更を公式に確認することはできませんでした 。しかし、このような制度変更が検討される背景には、専門家としていくつかの理由が考えられます。


  • 制度変更の背景(考察):

    1. 労働者の精神的健康の保護: 慣れない海外での生活や労働は、大きな精神的ストレスを伴います。事前に心理的な適性やストレス耐性をスクリーニングすることで、本人が日本で困難に陥るリスクを低減し、不幸な事態を防ぐという、労働者を守るための措置である可能性が考えられます。

    2. 人材の質の担保とミスマッチの防止: 受け入れ企業側にとっても、精神的に安定し、日本の職場環境に適応する準備ができている人材を迎え入れることは、早期離職の防止や生産性の向上につながります。インドネシア政府が、日本へ送り出す人材の質を担保するための施策として導入する可能性があります。

    3. 政府による管理強化と責任ある送り出し: インドネシア政府(特に移住労働者保護庁 BP2MI)が、自国民の海外就労に対する管理を強化し、「責任ある送り出し国」としての国際的な評価を高めようとする動きの一環とも考えられます。これは、両国間の労働協力関係をより持続可能なものにするための、前向きな取り組みと見ることができます。


  • 正確な情報の入手方法: このような重要な手続き変更については、伝聞に頼らず、必ず公式サイトなどで確認することが不可欠です。以下の方法で最新かつ正確な情報を手に入れることをおすすめします。

    1. 公式ウェブサイトの確認: 駐日インドネシア共和国大使館(KBRI Tokyo)および、インドネシア移住労働者保護庁(BP2MI)の公式ウェブサイトを定期的に確認してください。制度変更があった場合、これらの機関から公式な発表がなされます。

    2. 専門家への相談: 特定技能ビザを専門とする行政書士や、受け入れ企業を支援する「登録支援機関」に問い合わせてください。これらの専門家は、日々の業務の中で各国の最新の規則変更を常に把握しています。

    3. 送り出し機関への照会: インドネシア現地の送り出し機関(P3MI)と提携している場合は、彼らに直接確認するのが最も確実です。現地の国内手続きの変更については、彼らが最も早く情報を入手します。

このように、未確認情報に対しては慎重に、しかしその背景を論理的に考察し、確実な検証方法を把握しておくことが、確実なビジネス判断につながります。


最後に:インドネシア人材とのパートナーシップが拓く未来


この記事シリーズでは、日本のサービス業が直面する人手不足という課題に対し、インドネシア人材の活用が極めて有効な戦略的選択肢であることを、多角的な視点から明らかにしてきました。経営者の鋭い直感から始まったこの探求は、客観的なデータ、深い文化理解、そして具体的な実践手法によって、確固たる確信へと変わったのではないでしょうか。


この記事シリーズで解説してきた主なポイントは以下の通りです。

  1. データが示す、疑いのないトレンド: 日本の外国人労働市場において、インドネシア人材は他の追随を許さない圧倒的な成長率を記録しています。これは一過性の現象ではなく、両国の政策と社会経済的要因が合致した、構造的かつ持続的な潮流です。この流れに早期に乗ることは、将来の安定的な人材確保において大きなアドバンテージとなるでしょう。

  2. 文化が生む、強力な親和性: インドネシア人の持つ穏やかで協調性を重んじる気質、そして「ゴトン・ロヨン」に代表される相互扶助の精神は、日本の職場文化と高い親和性を持ちます。特に、バリ島の人々がバリ・ヒンドゥーの教えの中で育む「無償の奉仕(ンガヤ)」や「因果応報(カルマ)」といった価値観は、日本の「おもてなし」の心と深く共鳴し、サービス業において他にはない素晴らしい資産となるでしょう。

  3. 戦略的パートナーシップの可能性: インドネシア人材の採用は、単なる労働力の補充ではありません。彼らの背景にある豊かな文化や価値観を理解し、尊重することで、組織に新たなダイナミズムと温かみをもたらすことができます。特に、バリの精神性と日本の価値観の共通点を探求し、それをサービス哲学に昇華させることができれば、他社には模倣不可能な独自のブランド価値を創り出すことも夢ではないでしょう。

  4. 複雑な手続きは、乗り越えられる障壁: 特定技能ビザの取得プロセスは、確かに複雑に見えるかもしれません。しかし、ここで示したように、政府の管理システムや二国間のルールを正しく理解し、ステップバイステップで進めれば、必ず乗り越えることができます。これは、労働者の権利を守り、持続可能な関係を築くための必要な仕組みだと言えます。


最後に提案したいのは、インドネシア人材を単なる「従業員」としてではなく、「共創のパートナー」として迎えることです。彼らの持つポテンシャルを最大限に引き出すためには、給与や待遇といった条件面だけでなく、宗教や文化への深い配慮、そして彼らの価値観を尊重する職場環境を作ることが欠かせません。

このパートナーシップは、日本企業に人手不足の解消という直接的な利益をもたらすだけでなく、組織の多様性を高め、グローバルな視点を社内に根付かせ、ひいては日本の社会全体をより豊かで活力あるものへと変えていく力を持っています。直感を確信に変え、今こそ行動を起こすときです。インドネシアとの共創の先に、日本のサービス業の新たな成長が待っているはずです。

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