【研修の効果測定が困難】研修を実施しても、その効果が本当に業務に活かされているか分からない…
- takeshi kawamoto
- 7月9日
- 読了時間: 4分
「こんな困りごとありますよね。従業員のスキルアップのために、時間と費用をかけて外部から講師を招き、マナー研修やリーダーシップ研修を実施した。研修直後のアンケートでは『大変満足した』『とても勉強になった』と高評価が並ぶ。しかし、数週間後、現場での従業員の行動が何も変わっていないように見える…。本当にこの研修に成果はあったのか、投資対効果(ROI)を問われても、具体的なデータで示すことができず、結局『やりっぱなし』の自己満足イベントで終わってしまっている。」
そのお悩みは、研修を「点」で捉えていることから生じます。研修直後の満足度アンケートは、いわば研修の「人気投票」にすぎません。本当に重要なのは、研修という「点」が、その後の「線」(=日々の業務での行動変容)となり、最終的に「面」(=ホテル全体の業績向上)に繋がっているかを検証することです。そのためには、世界標準の評価モデルを取り入れ、研修を計画する段階から「何を」「どのように」測定するのかを設計しておくことが不可欠です。
効果的な解決方法
「やりっぱなし研修」から脱却し、研修の価値を最大化するには、国際的に広く用いられている**「カークパトリックの4段階評価法」**というフレームワークの導入が極めて有効です。
レベル1:反応(Reaction)- 満足したか? 研修直後に行う満足度アンケートがこれに当たります。「内容は有益でしたか?」「講師は分かりやすかったですか?」などを測ります。これは最も簡単ですが、学習効果や行動変容を保証するものではありません。
レベル2:学習(Learning)- 何を学んだか? 研修によって、知識やスキルが実際に身についたかを測定します。研修の前と後で、同じ内容の理解度テストやクイズを実施し、スコアの伸びを比較するのが効果的です。
レベル3:行動(Behavior)- 行動は変わったか? ここからが本番です。研修で学んだことが、実際の現場で実践されているかを評価します。研修から1〜3ヶ月後に、上司が部下の行動をチェックリストで観察したり、同僚や部下からの360度フィードバックを行ったりします。
レベル4:結果(Results)- 業績に貢献したか? 最終段階として、研修が組織全体の業績にどのような影響を与えたかを測定します。例えば、クレーム対応研修後、実際にお客様満足度(CS)スコアが向上したか、クレーム件数が減少したか、といった具体的なKPI(重要業績評価指標)の変動を見ます。
こうすれば解決できる!カークパトリックモデルに基づく研修効果測定プラン
以下の表は、研修の効果を多角的に「見える化」するための具体的な測定プランです。
評価レベル | 測定する内容 | 具体的な測定方法 | 測定のタイミング |
レベル1:反応Reaction | 研修への満足度(面白かったか、役に立ちそうか) | ・研修終了直後の満足度アンケート(5段階評価、フリーコメントなど) | 研修終了直後 |
レベル2:学習Learning | 知識・スキルの習得度(何を理解し、何ができるようになったか) | ・研修の開始前と終了直後に、同じ内容の理解度テストやロールプレイングテストを実施し、スコアの差分を測定する。 | 研修の前後 |
レベル3:行動Behavior | 現場での行動変容(学んだことを実践しているか) | ・上司が、研修内容に基づいた行動観察チェックリストを用いて、部下の日常業務を評価する。 ・対象者の同僚や関係者にヒアリングを行う。 ・本人に、実践レポートを提出させる。 | 研修後 1〜3ヶ月後 |
レベル4:結果Results | 組織・業績への貢献度(研修がビジネスにどう影響したか) | ・研修の目的に関連するKPIを設定し、研修前後の数値を比較・分析する。 【例】 - 営業研修後: 顧客単価、成約率 - CS研修後: 顧客満足度スコア、口コミ評価 - 労務研修後: 離職率、残業時間 | 研修後 3〜6ヶ月後 |
重要なポイント: 研修を企画する前に、「レベル4:結果」として何を達成したいのか(例:顧客満足度を5%上げる)を決め、そこから逆算してレベル3、レベル2、レベル1の目標と測定方法を設計することが、成功の鍵となります。
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