【文化の壁】面接での受け答えが国民性によるものか、個人の資質か判断がつかない…
- takeshi kawamoto
- 7月9日
- 読了時間: 4分
「こんな困りごとありますよね。面接で自己PRを求めても、謙遜してしまって長所をあまり話してくれない候補者。逆に、自信満々に聞こえるほどハキハキと実績を語る候補者。その態度が、本人の資質なのか、それとも文化的な背景や国民性によるものなのか判断できず、評価に悩んでしまう。」
このジレンマは、多くの人事担当者が直面する大きな壁です。私たちは無意識のうちに、日本の「謙虚さを美徳とする」文化的な物差しで相手を測ってしまいがちです。しかし、その物差しは世界共通ではありません。この課題を解決する第一歩は、面接官自身が「自分の常識は、あくまで一つの文化に過ぎない」と認識し、評価の軸を「印象」から「事実(ファクト)」へとシフトさせることです。候補者の話し方や態度といった「表面的なスタイル」ではなく、その背景にある「思考プロセス」や「具体的な行動」に焦点を当てることで、文化のフィルターを超えて本質を見抜くことができます。
効果的な解決方法
解決策は、面接のやり方を**「候補者の人柄を“感じる”」ものから、「候補者の行動特性を“引き出す”」ものへ**と設計し直すことです。
異文化理解の事前学習: 面接官は、候補者の出身国の文化について最低限の知識(例:コミュニケーションスタイル、キャリア観など)をインプットしておきましょう。これにより、ステレオタイプな見方を避けることができます。
「事実」と「解釈」の分離: 面接中は、候補者の言動(事実)と、それによって自分が抱いた印象(解釈)を意識的に切り離します。「自信過剰に見える(解釈)」のではなく、「自身の成果を具体的な数字で語った(事実)」というように、客観的な行動を評価シートに記録します。
質問の工夫: 漠然とした質問は文化的な回答を引き出しやすいため、「もし~だったら、どうしますか?」といった状況設定型の質問や、「過去にチームで困難を乗り越えた経験を教えてください」といった具体的なエピソードを求める質問を多用します。これにより、文化背景に左右されにくい、個人の思考力や行動特性を見極めることができます。
こうすれば解決できる!文化の壁を越える面接術
以下の表は、文化的な違いから生じがちな行動パターンと、それに対して面接官が取るべき適切なアプローチをまとめたものです。
ありがちな文化的行動パターン(例) | 面接官が抱きやすい誤解 (NGな解釈) | 本質を見抜くためのアプローチ | 効果的な質問・対応例 |
① 自己PRが控えめ・謙虚(アジア圏などに多い傾向) | 「意欲が低いのでは?」「アピールできる実績がないのでは?」 | 個人の成果ではなく、チームへの貢献度や他者からの評価を引き出す。 | ・「このプロジェクトを成功させるために、あなたはチームの中でどんな役割を果たしましたか?」 ・「当時の上司や同僚は、あなたの仕事ぶりをどのように評価していましたか?」 |
② 実績を堂々とアピールする(欧米圏などに多い傾向) | 「自己中心的では?」「協調性がないのでは?」 | アピールの背景にある客観的な事実と、チームワークに関する考え方を確認する。 | ・「その素晴らしい実績は、どのような工夫や努力によって達成されたのですか?」 ・「私たちのホテルではチームワークを重視していますが、あなたはどう考えますか?」 |
③ 面接官の目をじっと見て話す | 「威圧的だ…」「馴れ馴れしいのでは?」 | アイコンタクトは、国によって**「敬意」や「真剣さ」**の表現方法だと理解する。 | ・態度で評価せず、話の内容に集中する。 ・他の質問を通じて、人柄や協調性を判断する。 |
④ 沈黙の時間がある・即答しない | 「質問を理解していない?」「反応が遅い…」 | 即答を避けるのは、慎重に考え、誠実に答えようとしている姿勢の表れかもしれないと捉える。 | ・急かさずに、候補者が考えをまとめるのを待つ。 ・「もし質問の意図が分かりにくければ、遠慮なく聞き返してくださいね」と一言添える。 |
⑤ 給与や待遇について率直に質問する | 「お金のことばかり気にしている…」 | キャリアに対する**現実的で真剣な姿勢**の表れと捉える。労働条件の確認は正当な権利。 | ・隠さずに、誠実に情報を提供する。 ・「私たちは、あなたのこれまでのご経験とスキルを正当に評価したいと考えています」と伝える。 |
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