top of page

【教える側のスキル不足】日本人社員に、外国人材への効果的な指導スキルが不足している…

「こんな困りごとありますよね。外国人スタッフのOJT担当として、現場のエースである日本人社員を任命した。しかし、本人のプレーヤーとしての優秀さと、指導者としての能力は全くの別物。良かれと思ってした『背中を見て学べ』式の指導が裏目に出たり、文化の違いに戸惑ってうまくコミュニケーションが取れなかったり…。教える側は自信をなくし、教わる側も成長できず、結果としてチーム全体の生産性まで落ちてしまう。」

この問題の根源は、「教える」という行為を専門的な「スキル」として捉えず、個人の資質や経験則に丸投げしてしまっていることにあります。特に、多様な文化背景を持つ人材を育成するには、従来の日本のやり方だけでは通用しません。「優秀な先輩」が、必ずしも「優秀なトレーナー」ではないという事実を認め、教える側の日本人社員にこそ、体系的な指導スキルをインプットすることが、外国人材育成を成功させるための最も重要な投資となります。


効果的な解決方法


OJTトレーナーを孤独なプレイヤーにせず、会社として育成し、サポートする体制を整えることが不可欠です。

  1. 「異文化指導者」としての研修を必須化する: OJTトレーナーに任命する前の「必修科目」として、指導者向けの研修を実施します。これは、精神論ではなく、具体的なスキルを学ぶ場です。

    • 異文化コミュニケーション研修:「ハイコンテクスト/ローコンテクスト」といった文化的な物差しや、学習スタイルの違いを学びます。これにより、「なぜ彼らは『なぜ』と聞くのか」といった疑問が、理解に変わります。

    • グローバル標準の指導法:「PQP法(全体→部分→全体)」や、具体的なフィードバックの方法など、前回の記事でも触れたような体系的な教え方のフレームワークを学びます。

    • やさしい日本語ワークショップ: 外国人に伝わりやすい、シンプルで明確な日本語の話し方を実践的にトレーニングします。

  2. トレーナー専用の「武器(ツールキット)」を授ける: 手ぶらで戦場に送り出すようなことはやめましょう。誰でも一定のレベルで指導ができるように、会社が「武器」を用意します。

    • 標準化された育成ツール: ポジションごとの「OJT計画書」「スキルチェックリスト」「動画マニュアル」などを整備し、トレーナーに提供します。これにより、指導内容のバラつきを防ぎます。

    • コーチング質問集:「あなたはどう思う?」「どうすればもっと良くなるかな?」といった、相手に考えさせるための質問集(カンペ)を用意するだけでも、ティーチングからコーチングへの移行を助けます。

    • 指導の「虎の巻」:「よくある失敗例とその対策」「効果的な褒め方・注意の仕方」などをまとめた、トレーナー向けの簡単なガイドブックを作成します。

  3. トレーナー同士の「コミュニティ」を作る: 一人で悩みを抱え込ませないために、トレーナー同士が繋がり、学び合える場を作ります。

    • 情報交換会の定期開催: 月に一度など、OJTトレーナーが集まり、「今こんなことで困っている」「こんな工夫をしたらうまくいった」といった成功事例や悩みを共有する場を設けます。横の繋がりが、何よりの心の支えとなり、実践的なノウハウの共有も進みます。


こうすれば解決できる!異文化対応トレーナー育成プログラム


以下の表は、日本人社員を、多様な部下を育てられる「グローバル・トレーナー」へと育成するためのプログラム案です。

育成プログラム

目的

具体的な研修・施策内容

期待されるトレーナーの変容

① 知識インプット

指導に必要な基礎知識を習得する

異文化理解研修(文化・価値観・学習スタイルの違いを学ぶ) 指導法研修(PQP法、コーチングの基本、フィードバック手法を学ぶ)

「自分のやり方で教える」 相手に合わせて教え方を工夫する」

② スキル実践

研修で学んだ知識を使えるスキルに変える

ロールプレイング研修(外国人役を立てて、指示出しやフィードバックを模擬実践する) ・**「やさしい日本語」変換トレーニング

「頭では分かっているが、できない」 「意識すれば、実践できる」

③ マインドセット醸成

指導者としての自覚と自信を持つ

・OJTトレーナーへの辞令交付**や、トレーナー手当の支給。 ・経営層から、トレーナーの重要性や期待を伝えるメッセージを発信する。

「面倒な追加業務」 会社に認められた重要な役割

④ 継続的サポート

孤独にさせず、継続的な成長を促す

トレーナー同士の情報交換会(月1回)の開催。 ・人事担当者による、トレーナーとの定期的な1on1面談。

「一人で抱え込んで、悩む」 チームで相談し、解決する

Google スプレッドシートにエクスポート

最新記事

すべて表示
【入管調査第3部】緊急事態編:予告なし!恐怖の「抜き打ち調査」にどう立ち向かうか

何の予告もなく、オフィスのドアがノックされる。そこに立っているのは、身分証を提示する入管の職員──。 これこそが、最も恐れられている「抜き打ち調査」です。証拠隠滅の恐れがあるなど、重大な疑義を持たれている場合に行われることが多く、対応を一つ間違えれば、在留資格の取消しや退去...

 
 
 
【入管調査第2部】実践編:入管から連絡が!「事前通知あり」の調査、当日の流れと完全準備マニュアル

「出入国在留管理庁ですが、〇月〇日に、在留状況の確認のため、御社へお伺いします。」 入管からこんな連絡が来たら、心臓が止まる思いかもしれません。しかし、事前に通知がある調査は、決してあなたを追い詰めるためだけのものではありません。むしろ、誠実に対応し、疑いを晴らすための「チ...

 
 
 

コメント


© 2019 HR BRIDGE

bottom of page