【密かに入管の取締が強化】シリーズ(全4部)第2部:「労基署だから安心」は罠
- takeshi kawamoto
- 8月12日
- 読了時間: 3分
「労基署だから大丈夫」は過去の話。取締りのキーマンになった『労働局』の恐るべき新常識
第1部では、不法就労に対する罰則が、企業の存続を揺るがすレベルにまで強化された実態を見ました。しかし、今回の取締り強化で、経営者がそれと同じくらい、あるいはそれ以上に警戒すべき変化が「労働局の役割変容」です。これまで労働者の権利保護を主な役割としてきた労働局が、今や警察・入管と並ぶ「取締り機関」として、明確に位置づけられました [8]。
警察・入管・労働局の「三位一体」体制
新しい方針では、警察、入管局、そして労働局が現場レベルで緊密に連携することが定められています。
警察・入管・労働局の連携プレー
連携分野 | 目的 | 具体的なアクション |
共同調査・取締り | 不法就労の機会をなくす | 合同での立入検査、不法就労と労働法違反の両面から共同で対処 [8]。 |
行政処分 | 悪質業者を市場から排除 | 警察・入管からの情報に基づき、労働局が不法就労に関わった派遣・紹介事業者の事業許可を取り消す [8, 9, 10, 11]。 |
情報共有 | 効率的・網羅的な取締り | 「外国人雇用状況届出」などのデータをオンラインで共有し、捜査に活用 [8]。 |
広報・啓発 | 不法就労を未然に防ぐ | 摘発事例を積極的に公表し、事業者への注意喚起を共同で行う 。 |
「労働相談」が「不法就労の摘発」に直結する時代へ
ここが最も恐ろしいポイントです。労働局の職員には、職務上、不法滞在の疑いがある外国人を知った場合、入管に通報する法的義務があります(出入国管理及び難民認定法第62条第2項) 。
しかし、同時に労働局は、在留資格の有無にかかわらず、すべての労働者の権利を守るという使命も負っています。このため、これまでは賃金未払いなどで相談に来た不法就労者について、すぐに入管へ通報するのではなく、権利救済を優先する運用がなされてきました 。現場では、取締りを要請する「通報」ではなく、判断を入管に委ねる「情報提供」という形で、義務と使命のバランスを取っていたのです 。
しかし、2024年の新方針で強調された「円滑な情報共有」は、この現場の裁量をなくし、労働局から入管への情報提供を半ば義務化するものです。
これは企業にとって何を意味するのか? これまでなら、外国人従業員との労務トラブルは、労働局の指導のもと、労務問題として解決されることがほとんどでした。しかし、これからは違います。労働局への労働相談が、従業員の在留資格の問題をあぶり出し、入管への情報提供を経て、会社が不法就労助長罪で摘発されるという流れが、現実的なリスクとして急浮上したのです。
もはや、労務問題と入管問題の間に「防火壁」は存在しません。企業は、労働局を単なる労使紛争の調停役ではなく、移民法執行ネットワークの一員として認識し、対応する必要に迫られています。
第3部では、不法就労が実際にどのようにして発覚するのか、その予測不可能なリアルな経路を解き明かします。
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