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【メンタルヘルスの不調】異国でのストレスから、メンタルヘルスの不調にどう対応すればいいか分からない…

「こんな困りごとありますよね。以前は明るく、仕事にも前向きだった外国人スタッフが、最近、明らかに元気がない。ケアレスミスが増え、遅刻や欠勤も目立つように。心配して『何かあった?』と声をかけても、『大丈夫です』と力なく笑うだけ。言葉の壁、文化の違い、日本での孤独、将来への不安…。異国で暮らす彼らが抱えるストレスは、私たちの想像をはるかに超えているのかもしれない。しかし、心のデリケートな問題にどう踏み込んでいいか分からず、有効な手立てを打てないまま、状況が悪化してしまう。」

これは、外国人雇用における最も深刻で、そして見過ごされがちな問題です。彼らは、私たち日本人従業員が抱える仕事上のストレスに加え、**「外国人であるがゆえの特有のストレス」を常に抱えています。また、メンタルヘルスの不調を「個人の弱さ」と捉える文化で育ったため、助けを求めることに強い抵抗がある場合も少なくありません。会社として、彼らが発するSOSサインを見逃さず、安心して専門家のサポートに繋げられる「セーフティーネット」**を、組織的に構築しておくことが、企業のリスク管理としても、人道的な責任としても不可欠です。


効果的な解決方法


従業員のメンタルヘルス不調への対応は、「個人の問題」ではなく「組織の課題」です。予防から事後対応まで、体系的なサポート体制を整えましょう。

  1. 予防:ストレスを溜めにくい職場環境を作る これまでの記事で触れてきた、風通しの良いコミュニケーション、公平な評価制度、キャリアパスの提示、孤独を感じさせないコミュニティ作りといった、全ての取り組みがメンタルヘルスの「予防」に繋がります。特に、上司との定期的な1on1ミーティングは、部下の小さな変化に気づき、ガス抜きをするための最も重要な機会です。

  2. 早期発見:不調のサインに気づく仕組み 本人が「助けて」と言えるのを待つのではなく、会社側から不調のサインをキャッチしにいく仕組みが必要です。

    • ストレスチェック制度の活用: 50人以上の事業場で義務化されているストレスチェックですが、全社で実施するのが望ましいです。アンケートは多言語対応のものを用意し、外国人スタッフも正直に回答できる環境を整えます。

    • 管理職への「ラインケア」研修: 上司が部下の心の健康に配慮することを「ラインケア」と呼びます。管理職向けに、部下の異変(不調のサイン)に気づく方法や、**適切な声のかけ方(傾聴のスキル)**を学ぶ研修を実施します。

  3. 専門家への接続:安心して相談できる窓口の設置 これが最も重要なセーフティーネットです。会社や上司には相談しにくい内容も、外部の専門家になら話せるかもしれません。

    • EAP(従業員支援プログラム)の導入: 会社が外部の専門機関と契約し、従業員が無料で、かつ匿名でカウンセリングなどのサポートを受けられる制度です。ここで絶対に欠かせないのが、**「多言語対応」かつ「異文化カウンセリング」**が可能なEAPを選ぶこと。母国語で、自分の文化背景を理解してくれるカウンセラーに相談できることは、彼らにとって計り知れない安心感をもたらします。


こうすれば解決できる!外国人社員向けメンタルヘルス・サポート体制


以下の表は、外国人スタッフの心の健康を守り、安心して働ける職場を実現するための、具体的なサポート体制の構築プランです。

取り組みの段階

目的

具体的な施策

ポイント・注意点

① 予防的アプローチ(未然に防ぐ)

ストレスを溜めにくい心理的安全性の高い職場を作る

・定期的な1on1ミーティングの実施。・国籍に関係なく交流できる社内イベントの企画。・公平で透明性の高い人事評価制度の運用。

・日頃からのオープンなコミュニケーションが最大の予防策。

② 早期発見のアプローチ(サインに気づく)

不調のサインを早期に察知し孤立させない

多言語対応のストレスチェック制度の実施。・管理職向けの**「ラインケア研修」**の必須化。(部下の変化への気づき方、傾聴の方法など)

・ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された従業員には、産業医との面談を勧奨する。

③ 専門的サポートの導入(セーフティーネット)

誰でも安心して専門家に相談できる窓口を用意する

・**多言語・異文化カウンセリングに対応したEAP(従業員支援プログラム)**を導入する。・地域の多言語対応可能な医療機関や相談窓口のリストを作成し、周知する。

・**EAPの利用は、会社に一切知られず、プライバシーが完全に守られることを、全従業員に繰り返し周知徹底する。**これが利用促進の鍵。

④ 不調者への対応(いざという時に)

本人の回復を最優先し職場復帰を支援する

・産業医や主治医と連携し、本人の状態に合わせた休職や業務内容の軽減を検討する。・職場復帰の際は、リハビリ出勤など、段階的な復帰プラン(リワークプログラム)を用意する。

・プライバシーに最大限配慮し、本人の許可なく、他の従業員に病状などを伝えない。


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