【キャリアのゴールが違う】日本での永住を望んでいないスタッフに、どんなキャリアを提示すればいいか…
- takeshi kawamoto
- 7月9日
- 読了時間: 4分
「こんな困りごとありますよね。優秀な外国人スタッフとのキャリア面談で、『3〜5年働いて、経験を積んだら母国に帰ってビジネスをしたいんです』と、目を輝かせながら打ち明けられる。日本での管理職への昇進や、永住を前提とした従来のキャリアパスは、彼らには全く響かない。会社としては、せっかく育てた人材が去ってしまうのは大きな痛手。しかし、彼らの夢や人生設計も心から応援したい。一体、どんな目標を提示すれば、在籍してくれる期間中のモチベーションを高く維持し、双方にとって実りある時間にできるのだろうか。」
この課題に直面した時、多くの企業が「どうすれば引き止められるか」と考えてしまいがちです。しかし、発想を180度転換してみましょう。彼らを**「いずれ辞めてしまう人材」と見るのではなく、「世界に羽ばたいていく、自社の優秀な『卒業生(アルムナイ)』」**と捉えるのです。彼らが母国に帰った後も、あなたのホテルのファンであり続け、良きビジネスパートナーになるかもしれない。そのために、会社ができる最大の貢献は、**彼らの夢の実現に直結する「ポータブル(持ち運び可能)なスキル」**を、在籍期間中に徹底的に授けることです。これは、双方にとって最高のWin-Winの関係を築くための、新しい人材育成の形です。
効果的な解決方法
「いつかは帰る」と公言しているスタッフのエンゲージメントを高めるには、彼らの未来のゴールと、今の仕事を直結させるアプローチが不可欠です。
「ポータブルスキル」中心の育成計画を立てる: その会社でしか通用しないスキルではなく、世界中どこへ行っても価値のある「持ち運び可能なスキル」の習得を、育成の軸に据えます。
マネジメントスキル: チームリーダーシップ、コーチング、計数管理(PLの読み方など)、プロジェクトマネジメントといったスキルは、将来どんなビジネスをする上でも必須です。
専門スキル: ホテル独自の接客術を「世界に通用する最高峰のサービスメソッド」として体系化して教える、Webマーケティングやレベニューマネジメントの知識を学ばせるなど、専門性を高める機会を提供します。
本人の夢から逆算した「オーダーメイドの経験」を提供する: 画一的なキャリアパスではなく、彼らの夢に合わせて、経験の積み方をカスタマイズします。
例:「将来、母国で自分のホテルを開きたい」という夢を持つスタッフがいるなら、「では、うちのホテルにいる間に、フロント業務だけでなく、セールスやマーケティング、経理の仕事も経験してみませんか?ホテル経営に必要な全体像が見えるはずです」と提案します。
このような「あなただけのキャリアプラン」は、「会社は自分の未来を真剣に考えてくれている」という強いメッセージとなり、エンゲージメントを飛躍的に高めます。
「卒業生(アルムナイ)」ネットワークを構築する: 退職して終わり、ではなく、その後の関係も大切にします。退職者専用のSNSグループを作るなどして、帰国後も連絡を取り合える関係を維持します。彼らが母国で活躍する姿は、後に続く後輩たちの大きな刺激になりますし、将来的な海外展開の際の貴重な足がかりにもなり得ます。
こうすれば解決できる!グローバル人材のためのWin-Winな育成プラン
以下の表は、「いつかは帰る」と考える優秀なスタッフと、企業が共に成長するための具体的な育成プランです。
課題 | 発想の転換 | 具体的な育成アプローチ | 本人への伝え方・言葉がけ例 |
数年で退職する前提のスタッフに、どう投資すれば良いか分からない | 「引き留める」から「応援して、気持ちよく送り出す」へ。「優秀な卒業生(アルムナイ)」を育てる、という長期的視点。 | 「ポータブルスキル」の習得を軸にした育成計画を立てる。 ① マネジメントスキル (リーダーシップ、計数管理、労務管理) ② 専門スキル (高度な接客術、マーケティング、広報) ③ 語学・異文化対応スキル | 「あなたの『〇〇年に母国で起業する』という夢を、私たちは心から応援したい。そのために、うちのホテルで過ごす3年間で、将来必ず役に立つこれらのスキルを身につけませんか?私たちも、あなたの国の文化やビジネスの考え方をぜひ学びたい。お互いにとって、最高の3年間にしましょう。」 |
日本での昇進に興味がない | 「役職」ではなく「経験・スキル」をインセンティブに | 「プロジェクト・アサインメント」を積極的に行う。・新規サービス立ち上げプロジェクトのリーダー・新人OJTトレーナー・海外顧客向けマーケティング企画の担当といった経験を積ませる。 | 「支配人という役職には興味がないかもしれませんね。では、来年始まる新しい顧客満足度向上プロジェクトのリーダーに挑戦してみませんか?これは、将来あなたのビジネスを立ち上げる際に、非常に価値のある経験になるはずです。」 |
退職されると会社として損失だ | 「コスト」ではなく「未来への投資」と捉える | 「アルムナイ(卒業生)制度」を構築する。・退職後も続く、良好な関係を維持する。・帰国後の彼らに、現地の情報提供や協力を依頼できる関係を築く。 | 「あなたがこのホテルを辞めても、私たちの仲間であることに変わりはありません。いつでも遊びに来てください。いつか、あなたの国で、あなたと一緒に仕事ができる日を楽しみにしています。」 |
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